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あるデザイン系の雑誌のコラムに、アニメを好んで観る大人が増えた事を大人の幼児化だという主旨の記事がありました。果たしてそうでしょうか。

味蕾細胞の減少によって味に鈍感になった大人が、魚のハラワタを食べて苦いと言った子供に、「お前にはまだ大人の味がわからない」と宣うのと同じ浅はかさを感じます。

クレヨンしんちゃんの笑いは下品ですか?確かに上品ではありませんが、僕には人をバカにしたり皮肉ってとる笑いの方が余程下品に映ります。

オシリにもエロにも、現代のお笑いにありがちな誰かを笑う悪意も誰かに笑われる怯えも見えません。しんちゃんは堂々と自分のおバカを謳歌しているだけです。

ジブリのアニミズムは、遥か昔に絶滅した歴史ではない。現代を生きる僕達全員の心の奥深くに確実に現存している憧憬です。だからこそ世界中で受け入れられたのでしょう。

ウォルト・ディズニーは、自伝でミッキーは自分自身だと言ってます。あまり知られてませんが、世界で初めて喋ったアニメーションキャラクターはミッキーマウスで、世界で初めての声優はウォルト・ディズニー本人です。

彼のピュアな、そしてバカバカしい笑いを最初に受け取ったのは素直な子供達でした。最初は不承不承、子供に付き合っていた大人達も今ではすっかり夢の国のファンになり、ディズニーは大成功しています。

多くの大人達がアニメに夢中になるのは、世界が苦くなりすぎたせいでしょう。ニュースもCMもSNSもバラエティー番組でさえ子供には苦くて食べられない。政治だけでなく社会にすら興味を失うのは当たり前でしょう。そろそろ制作者サイドも自分達のボケた味覚に気付いていい頃だと思います。

少なくともデザイナーの仕事は、現状にイチャモンをつけることでも、相槌を打つことでもない。流行の原因と背景の本質を見つめ、その声に耳を傾ける事だと思います。抽象化され凝り固まった耳には、トトロの声も猫バスの声もまっくろくろすけの声も届かないでしょう。ま、全員喋りませんけどね(^^;)